インフルエンザワクチン接種について

例年、インフルエンザの流行に対して、ワクチン接種が奨励されています。

当クリニックでも、インフルエンザワクチンの予防接種を予約制で実施しています。報告により多少の違いはありますが、健康な成人ではワクチン接種による臨床効果はおよそ50~70%とされています。実は、鼻や気道粘膜の上皮細胞にウイルスが感染するのを予防するのは分泌型IgA抗体とよばれる抗体であり、ワクチンを皮膚に接種した場合に体内で上昇するのはIgG抗体と呼ばれる別の種類の抗体で、直接IgA型抗体は上昇しません。

IgG抗体には、感染した際に重症化するのを防ぐ作用がありますが、予防効果はありません。従って、現行のワクチンの効果は、「罹っても重症になるのを防ぐ」ことが主体です。予防効果があるといわれるのは、実は罹ってもごく軽くて済んでしまうために、感染したことが認識されなかった例も含んでいる可能性があります。

いずれにせよ、ワクチンを接種することで臨床的な効果が得られることは多くの場合言えることで、流行を少しでも防ぐことは社会的にも意味があります。特に、65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦、呼吸器や循環器に慢性疾患を持つ方、糖尿病や腎臓疾患の患者さん、免疫抑制薬を服用している方は、ご自分の免疫力が低下しているために、インフルエンザに感染すると重症化しやすく、ハイリスク(高危険)群と呼ばれています。この方たちにはワクチン接種が強く推奨されます。

ワクチンをつくるのには、ウイルスを鶏の卵で培養するので、その成分が混入するために、鶏卵に対する明らかなアレルギーのある人では、ワクチンの接種はアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。それ以外の人では、注射部位が腫れたりする程度の副作用を除いては、強い副作用を起きることは通常はありません。ただし、時には上・下気道炎症状や下痢を起こすことは経験されます。

接種を受ける時に、直前1カ月以内に風邪などに罹っていなかったかを問診票などで確認するのは、こうした副作用の出るリスクを軽減するためです。ごくまれ(百万人に約一人の割合)にではありますが、けいれんや昏睡など、神経系に激しい副作用が生じ、後遺症を残すことが報告されています。

わが国では、通常の予防あるいは治療内容で重篤な副作用が出た場合には、厚生労働省の管轄下にその障害を国として保障する制度があります。インフルエンザワクチン接種の場合にも、この「健康被害救済制度」を活用することができます。ワクチン接種全般については、国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)のホームページを、補償制度については、医薬品医療機器総合機構(PDMA)のホームページをご覧になって下さい。

当クリニックではインフルエンザワクチンの予防接種を予約制で実施しています。当日、まず体温を測りながら問診表に記入して頂き、簡単な診察の後で、明らかな問題がなければ接種致します。即時型の副作用が出ないことを確認するため、接種後15分程度は院内に止まっていて頂くようお願い致します。

国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)
医薬品医療機器総合機構(PDMA)