夏から秋にかけての花粉症・アレルギー性鼻炎について
花粉症と言えば、春にスギやヒノキの花粉によって引き起こされる「春の花粉症」が一般的ですが、実は、初夏から真夏、そして秋にかけて、それぞれの時期に飛散する花粉によって症状が出ることもあります。春ではないので、花粉症ではないとつい思いがちですが、熱や喉の痛みもなく、全身状態も良好なのに、鼻水や眼・喉の痒みが続き、時には咳が出て、風邪にしては随分長いなと思うような場合には、花粉症を疑ってみる必要があります。
実際にこの時期に鼻や眼の痒みを引き起こす花粉には、以下のような種類があります。
1) イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ギョウシバ)
4月~9月、年によっては10月ごろまで。特にカモガヤ花粉は、真夏にしばしば強い症状を引き起こします。
2) キク科、アサ科(ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ)
8~10月。特に、空き地や道端、河川敷などに生えていて花粉が飛散します。花粉の飛ぶ距離は比較的短いので、極端に近づいて吸い込まなければ、症状は軽いことが多いです。
3) ヒノキ科(スギ)
10~12月。実はこの時期にもスギ花粉が飛散して症状を引き起こすことがあります。春と比べて飛散量はそれほど多くないので、症状は春よりも軽いのが普通です。ただし、その年の夏に気温が高いと、秋以降の飛散量が増えるとされているので、近年の夏の猛暑を考えると、今後、「秋のスギ花粉症」にも一層の注意が必要になるかも知れません。
この他、花粉以外にも同様の症状を引き起こす要因があります。
4) ダニ・真菌類(ハウスダスト)
日本の高温多湿の環境では一年中繁殖しますが、ダニについては、特に6月から9月にかけては繁殖が強く、新たに生まれたダニと死滅した死骸の両者によって、鼻炎、結膜炎、喘息などのアレルギー症状を引き起こしやすくなります。
5) ネコ
ネコの体毛やフケ、唾液などに含まれる、アレルギーをひきおこすタンパク質成分(アレルゲン)により症状が出ます。この中で、Fel d1(フェルドワン、もしくはフェルディーワン)と呼ばれるアレルゲンが原因の9割を占めています。Fel d1は、唾液や皮脂の中に分泌され、さらに、自分の身体を舐めて清潔に保とうとする「毛づくろい(グルーミング)」により、全身の毛や皮膚に分布します。例えばダニのアレルゲンと比べると小さくて軽いので、皮膚から容易に離れ、広い範囲に飛散・拡散しやすいのが特徴です。猫を飼ったこともないのにネコアレルギーのある人は、どこからか飛んできたアレルゲンに過敏になった可能性があります。一年中症状を引き起こしますが、特に、毛の生え代わる春と秋の換毛期(3月頃と11月頃から、それぞれ6~8週間程度)には症状が強くなりがちです。
6) 血管運動性鼻炎
狭義のアレルギー反応ではありませんが、鼻腔の粘膜が、温度や湿度差、気圧の変化(低気圧や台風)などの気候の要因や、疲労、ストレス、寝不足などご自分の要因、あるいはタバコの煙や香水の刺激などで、花粉症と同様に粘膜からヒスタミンが放出されて、花粉症と同様の症状を引き起こします。特定のアレルゲンによって起きるのではなく、粘膜が過敏な体質の上に、自律神経系のバランスが乱れると、上に述べた様々な誘因で起きやすいとされています。治療は基本的には花粉症と同様で、抗ヒスタミン薬が中心となります。
さらに、春の花粉症と同様に、夏から秋にかけての花粉症でも同じように注意しなければならないのが、合併症としての花粉・食物アレルギー症候群 (Pollen-food allergy syndrome: PFAS)です。PFASとは、花粉症の人が、その原因花粉アレルゲンに構造の似たアレルゲンを含む食物(果実、野菜など)を食べた時に、類似したアレルゲン同士の交差反応によって様々なアレルギー反応を起こす病態です。主な症状は、口の中や喉の痒み、違和感で、これを別名、口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome: OAS)と呼んでいます。PFASは通常、OASに留まることが多いのですが、時に症状が口腔内に留まらず、眼や鼻の痒み、鼻水、蕁麻疹や、さらに、呼吸困難、血圧低下、意識消失などの、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こすことがあるので、油断はできません。
春から夏、秋にかけて飛散する花粉と、構造上似ていて症状を引き起こしやすい代表的な食材との関係は、以下のとおりです。
・スギ、ヒノキ(ヒノキ科)⇔トマト
・カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)⇔バラ科の食物:リンゴ、モモ、サクランボなど。
・イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ギョウシバ)⇔ウリ科の食物(メロン、スイカなど)、ナッツ類、バナナ、キウイ、トマトなど
・キク科、アサ科(ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ)⇔ウリ科の食物(メロン、スイカなど)、セリ科の野菜類(セロリ、ニンジンなど)
例えば、イネ科のカモガヤ花粉にアレルギーのある人が、暑い夏の日にスイカにかぶりついたら、口の中が痒くなって喉の痒みが出たり、あるいは、日頃からニンジンを食べても美味しく感じないし、口の中がざらつくので、ずっと敬遠して来たら、実はブタクサとの交差反応によるOASであったという事も有り得ます。
さらに、PFAS/OASの場合、その花粉が多く飛散する時期には、誘発される症状も強くなりやすいと考えられており、飛散期には特に注意が必要です。
診断:疑わしい花粉アレルゲンに対して、血液中の特異的IgE抗体価を測定し、正常値・基準値より一定以上、上昇・増加していれば陽性と判定します。ただし、最近では、血液中のIgE抗体がたとえ検出されなくても、鼻や眼の病変局所でIgE抗体が産生されていれば、その場で症状を惹起することがわかっています(「花粉症の診断と治療」を参考にしてください)。PFAS/OASが疑わしい人は、同時に疑わしい食物アレルゲンも調べることで、症状が直接その食物で起きているのか(I型の食物アレルギー)か、それとも、構造の似た花粉アレルゲンとの交差反応によるもの(II型の食物アレルギー)か、あるいは両者によっておきているのかを鑑別できます。
治療:春の花粉症と同様に、抗ヒスタミン薬(経口薬、点鼻や薬、点眼薬)や、あるいは症状が比較的強い時には、ステロイドの点鼻薬、点眼薬で対応します。PFAS/OASの人は、疑わしい食物の摂取を、特に交差反応を起こす花粉の飛散期には避けることで、強い症状が出るリスクを下げることができます。
スギによる症状が強い人では、スギ花粉のアレルゲン抽出物を用いたアレルゲン免疫療法、特に舌下免疫療法も良い適応となります。

