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喘息とライノウイルス感染

喘息や咳喘息の患者さんは、天候やストレス・疲労、風邪をひくなど、様々な条件によりコントロールが悪化しやすいことが特徴とされています(変動性)。この中で、最も頻度が高いのは、風邪がきっかけで悪化することです。喘息の悪化を引き起こすウイルスには、RSウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど、様々な種類がありますが、その中で、(ヒト)ライノウイルスはおよそ3割を占めています。

「ライノ」とはギリシャ語で「鼻の」という意味で、文字どおり、鼻腔の粘膜に感染して増殖し、鼻水や鼻づまり、時には喉の痛みを引き起こすウイルスです。いわゆる「鼻風邪」を引き起こす代表的なウイルスで、年間を通して感染する可能性がありますが、特に4月から6月、9月から11月にかけて感染者が多くなる傾向があります。一方、RSウイルスやインフルエンザウイルスが流行る冬場には比較的少ないとされています。乳幼児~小児が罹ることが多いのですが、成人でも感染することがしばしばあります。100種類以上のタイプ(血清型)があるため、どのタイプが流行するか予測がつかず、ワクチンの開発は困難で、予防接種ができません。

一般論として、ウイルスは体温より少し低い温度の方が増殖しやすいと考えられていますが、ライノウイルスも、33~34℃で最も活発に増殖します。そこで、例えば冷たい空気を吸うと、鼻腔内の温度が体温より下がり、ウイルスの増殖にちょうど適した温度になり、さらに粘膜の乾燥も加わることで、鼻から喉の粘膜で増殖が加速され、症状を引き起こします。

通常、鼻や喉の症状は比較的軽く済むことが多いのですが、一方で、喘息や咳喘息の患者さんでは、もともと体質として気管支が傷みやすく過敏なので(気道過敏性)、いったんライノウイルスに感染すると、しばしば炎症が気管支にまで及んでしまう結果、咳や痰、そして時にはヒューヒューゼイゼイ(喘鳴)や呼吸困難感が出て、ひどい場合には数週間続くこともあります。従って、喘息や咳喘息の患者さんはできるだけ罹らないに越したことはなく、予防が大切です。感染経路としては、感染者から鼻水・咳・会話などによって空気中に放出されたウイルスを、鼻や口から吸うことで感染する経路(飛沫感染)が主なので、(冬はもちろんのこと、夏でもエアコンから流れる)冷たい空気を吸わない、マスクで加湿する、鼻や喉のうがいをする、可能であれば密の状態を避けることなどによって、感染、あるいは感染してから粘膜で増殖して発症に至るリスクを下げることができます。一方、感染した人の鼻水や唾液がその人の手につき、その手でそのまま受話器やコピー機、コーヒーメーカーなどを触ると、そこにウイルスが付着します。これをさらに他の人が触ることで、ウイルスが触った人の手に付着します。その状態のまま自分の顔、特に鼻や口、眼のあたりを触ると、ウイルスがいわば間接的にこれらの臓器から感染して症状を引き起こします(接触感染)。接触感染の場合には手の消毒が重要ですが、大切なことは、「ライノウイルスはアルコールでは死なない」という事です。このウイルスと、下痢や吐き気をひき起こすノロウイルスとは、アルコールで破壊される「エンベロープ」と呼ばれる蛋白質がウイルスの表面に無いので、いくらアルコールで手を消毒しても、死なずに手についています。次亜塩素酸を使えば死滅しますが、日常生活でこの溶液を準備するのは簡単ではありません。さらに、次亜塩素酸溶液は強アルカリ性であるため、皮膚に直接触れさせると、肌荒れ、一種の火傷を引き起こします。そこで現実的には、「石鹸を用いて流水で十分な手洗いをして、手に着いたウイルスを洗い流す」ことが簡便で有効です。人は1時間に20回近く、自分では気づかずに顔から上に触れるとも言われているので、日頃からむやみに顔を触らないよう少し意識することも大切です。ちなみに、(新型)コロナウイルスとインフルエンザウイルスの表面にはこのエンベロープ蛋白があるので、アルコールによる消毒が有効です。

以上より、喘息を悪化させる様々なウイルス感染の予防手段の一つとしての手・手指の消毒は、アルコール消毒と石鹸・流水による手洗いの両方を同時にすることが望ましいと考えられます。

一方で、例え十分に注意しても、様々な事情で感染し、喘息・咳喘息が悪化してしまうことは誰にでもあります。その場合には、喘息・咳喘息自体の治療を強化し、状況によっては咳止めや去痰薬などの対症薬を併用することで、症状の悪化をできる限り抑えながら、最終的には患者さん自身の治癒力で気管支粘膜が修復されて症状が収まるのを待つことになります。粘膜が修復するには数週間かかるので、症状が完全に消えるまで、どうしてもそれだけの時間がかかってしまうこともあります。

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