当クリニックにおける初診の花粉症患者さんの診療方針について

本ホームページの「花粉症と気管支喘息の関係」の項でも説明しておりますように、花粉症あるいはアレルギー性鼻炎は、喘息の予備軍、もしくは軽症の喘息の可能性があり、逆に気管支喘息は鼻のアレルギーが合併しているリスクが極めて高いことが、これまでの多くの臨床研究で明らかにされています。例えば、アレルギー性鼻炎があると、将来気管支喘息になるリスクが3倍以上高くなると報告されています。なぜかと言えば、鼻(上気道)と気管支(下気道)とは連続しているので、アレルギー反応が、気道を上から下へ、あるいは下から上へと進み、結果として、程度の差はあっても、本質的には炎症が鼻と気管支とに同時に起きてくるからです。従いまして、花粉症の患者さんでも、喘息が潜在的に合併している可能性をチェックし、もしある程度以上の異常が見つかれば、初期段階の喘息(アレルギー性の下気道炎症)の可能性を考え、この段階で治療をしてしまうことが、将来、明らかな症状を示す喘息へと進むのを予防する上で重要であると考えられます。

具体的には、花粉症の患者さんに、喘息の患者さんと同様に呼吸機能検査を受けて頂き、潜在的な喘息の合併の可能性がないかをチェックし、もし一定以上の異常が見出された場合には、喘息・咳喘息を発症しつつあると考えて、鼻と同時に気道の炎症も早期の段階で治療してしまうことが、将来の喘息の発症を少ない薬剤量で予防することにつながると考えられます。

当クリニックではこの観点から、初診の花粉症の患者さんには、呼吸に関する症状がたとえその時点ではなくても、喘息・咳喘息の患者さんと同様に、呼吸機能検査と採血によるアレルギーチェックを実施していただくことをお勧めしています。

さらに、花粉症とともに咳が出ている方では、すでに下気道の炎症がある程度進んできている可能性が高く、こうしたチェックを行うだけでなく、一歩踏み込んで治療の適応となります。

勿論、検査したすべての患者さんが気道炎症の治療の適応となるわけではなく、気管支にはほとんど異常がないと判定される方や、極めて軽い炎症しかないと判定される方は、花粉症の治療のみ行い、気管支については経過観察となります。

実際には、これまで当クリニックを受診された、呼吸器症状の全くない花粉症の方々、あるいは花粉症と食物アレルギーを合併した方々でも、呼吸機能検査で軽度の異常が見つかり、1か月前後の初期治療でその異常が軽快した症例が少なからず経験されています。こうした患者さんの中には、詳しくお聞きすると、風邪の後に咳がしばらく続きやすかったとか、電車の中や部屋が変わると咳が出やすいといった、すでに気管支に炎症が及んでいることを示唆する症状を実は経験していた方もおられます。こうした方では、標準的な初期治療により潜在的な炎症は速やかに軽快することがほとんどです。

当クリニックにおける花粉症はこのように、ただ症状を緩和させるだけでなく、喘息の発症も予防するという診療理念に則って実施させていただいております。この点についてご理解、ご了承頂き、診療を希望される方は受診なさって下さい。

一方で、単に現時点での症状を緩和することだけを希望される方は、一般の内科系あるいは耳鼻科の医療機関を受診して頂き、適切な治療だけを受けられることをお勧め致します。