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アレルギーはなぜ起きるの?

外界から、自己とは異なるものが身体に侵入して来た時、私達の身体は二種類のいずれかの反応をします。一つは、これをあくまで非自己、異物、いわば敵と認識して、免疫システムを作動させて排除しようとする反応です。例えば、細菌やウイルスが感染した時の反応はこれに属します。一方で、いつも身体に取り入れている食べ物や、空気中から鼻や気管支が吸い込む花粉やダニ抗原などに対しては、過剰な免疫反応を起こさないように、免疫反応にブレーキがかかっています。あるいは、子宮の中で、自己自身ではない別の生命が誕生しても、これを排除することなく育んでいきます。この、過剰な行き過ぎた免疫反応を抑える機構を「免疫寛容」と呼びます。免疫寛容が機能しているおかげで、私達の身体は普通にものを食べ、流産せずに子を産むことができるわけです。この免疫反応の仕組みの中心を担うのが、制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)と呼ばれるTリンパ球です。この細胞の存在は、日本人の研究者、坂口志文先生により発見されました。

ところが、このTregの機能が、何らかの理由で弱まると、本来は敵対しないはずの食物抗原や吸入抗原、あるいは自分の身体の臓器(関節や皮膚、肺、腎臓、肝臓、神経などの様々な器官、組織)に対して、ブレーキが外れて免疫応答が作動し、これらを排除すべき異物と認識して攻撃し、その結果自らの組織を傷めてしまいます。これを、「免疫寛容の破綻」と呼びます。免疫寛容の破綻により、外から侵入するものに対して外向きに起きるのがアレルギー反応であり、自己の成分に対して内向きに過剰な応答が起きてしまうのが自己免疫疾患です。

それでは、分子のレベルで、どのような分子が制御性T細胞(Treg)の機能と関係しているのでしょうか。坂口先生達の研究で、FoxP3という転写因子(DNAに結合して遺伝子の発現を調節する蛋白質)が、Tregの分化や機能の発現に重要な働きをしていることが明らかになりました。さらに、吉村昭彦先生達によって、Nr4aとまとめて呼ばれる三つの転写因子群も、制御性T細胞をつくる上で必須の要素であることもわかりました。そこで、これらの転写因子の発現や働きを制御することで、広く免疫応答をそれぞれの状況に応じて好ましい形にできないかという試みが、基礎医学の研究者の皆さんで盛んに行われています。

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