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「治療の窓」とは?

正確には、「治療機会の窓 (window of opportunityもしくはwindow of therapeutic opportunity)」と呼ばれる概念で、特に関節リウマチの診療・治療でよく引用されます。関節リウマチでは、炎症による関節の破壊は、発症してから2年以内に急速に進行することがわかっています。逆に、この期間中に有効な治療を施せば、関節の破壊をある程度抑制することができるので、発症時にすでに関節炎が強い、あるいは抗CCP抗体価が高いと言った、関節の破壊が進行しやすいと予測される症例では、発症早期の強力な治療が特に重要視されています。逆に早期の2年間を過ぎると、いわば治療の窓が狭まってきて、同じ治療を行っても効果が弱くなり、関節の破壊を十分に食い止められないことがあります。

一方、気管支喘息では、関節リウマチほど、発症してすぐ急速に気管支の構造変化が進行することは、一般的にはありません。しかし、発症早期に抗炎症療法を的確に導入することの重要性は同様に指摘されていて、これを早期治療介入(early intervention)と呼んでいます。初期・早期の段階では、気道・気管支の炎症がたとえその時点では強くても、治療に良く反応し、呼吸機能の低下も軽微で済みます。一方で、この時期に見過ごされて治療を受けなかったり、あるいは患者さんが、炎症が完全に治まっていなくても治療を自己中断してしまうと、全例ではありませんが、中には気道の炎症が進行した結果、気管支粘膜が線維化を起こして厚くなり、元に戻らない(不可逆性の)変形を来すことがあります。これを「気道壁のリモデリング」と呼びます。リモデリングの段階にまで進行すると、呼吸機能も低下し、症状も慢性的に遷延しがちになります。ある程度以上進行してしまった気道リモデリングに対しては、もはや吸入ステロイド剤や生物学的製剤(バイオ製剤)などの効果は限られています。従って、気管支喘息の治療でも、「治療機会の窓」が存在します。

以上より、気道の炎症は、初期のまだ軽いうちに、つまり治療の窓が十分に開いている間に、治療を然るべき期間続けて、できるだけ良くしてしまい、それから薬を減量、中止することが、気道リモデリングによる難治化や慢性化を防ぐ意味で重要です。そのためにも、喘息の可能性を早期に診断することがあらためて大切だという事が出来ます(「なぜアレルギー・喘息の早期診断が重要なのか」も参照してください)。

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